お米へのこだわり


佐田商店のきりたんぽは、減農薬のササニシキとあきたこまちをブレンドして造ります。お米は、秋田県由利本荘市矢島町の佐々木孝夫さんが手掛ける『久治郎米』です。こだわり抜いたこのお米には、佐々木さん家族の大切な思いがありました。
佐々木さん家族の田んぼは、鳥海山へとつながる由利原高原の麓(ふもと)にあり、坂道を上ると、左手には段々と続く棚田が広がっています。
もともとは※由利牛の繁殖雌牛の飼育を家業としてきた佐々木孝夫さん一家は、この自然の恵みを十分に生かし、牛の牛糞も肥料にする循環型農業に取組みながら、独自の知恵と工夫により「安全・安心で、美味しい米つくり」に日々取り組んできました。
※由利牛とは
秋田しんせい農業協同組合由利牛肥育部会員の飼育による黒毛和種で、あきた総合家畜市場に上場された子牛を素牛とすることを基本とし、他地域から素牛を導入した場合は飼養期間を20ヶ月以上とする。枝肉格付等級が5等級及び4等級のものとし、3等級の中でも生後月齢30ヶ月以上のもので、出荷6ヶ月前から飼料米を1日1kg以上与えているものという定義になっています。
この地で“日本一”を目指してお米づくりにいそしむ佐々木孝夫さん親子は、佐々木孝夫さん、長男の巧(たくみ)さん、三男の求(もとむ)さんの3人で、次男の基(もとい)さんは地元農協の職員でもあります。
平地での米づくりと違い、棚田では手間がかかりますが、「できたお米のおいしさは格別」と佐々木さんは太鼓判を押します。
お米のおいしさは土質(土の性質)で決まる
鳥海山から流れる沢内川(さわうちがわ)の水と、山の粘土質に育まれた土壌は、佐々木さん家族に届けられた「自然からの贈り物」です。
水は棚田を段々に流れ、田んぼを適温で潤します。ペースト状の肥料を使った土づくりに始まり、苗の植え付けは十分に間隔をとったV字型農法です。
この農法によって、苗には太陽の陽がよく当たり、風通しも良くなることでお米の品質が向上しました。
化学肥料は一切使わず、農薬は最小限に抑え、家族総出で※葉面散布や草刈りを重ね、丈夫で粒の大きい一等米に育てます。
※葉面散布とは
肥料や養分を葉に散布し、葉面から吸収させる方法のことです。
お米を収穫した後は、稲藁(いなわら)を種牛の牛舎に敷き、牛舎で使った藁と牛糞などを使って※堆肥にし、春には田んぼに入れて土を豊かにしてから、苗を植えます。これが循環型農業です。
※堆肥とは
わら・落葉などを積み重ね、腐らせて作った肥料のこと
とても手間がかかりますが、家族と共に手を惜しまず、こだわり抜いたお米づくりにいそしむのが、佐々木さん家族の誇りです。
丹誠込めてつくったお米を認めてもらいたくて、「おいしい米づくり全国大会」に出品したことが、すべての始まりです
全国大会で当時受賞するのは「コシヒカリ」ばかりで、佐々木さんがつくる「あきたこまち」はなかなか認められず、悔しい思いが続きました。
どうしたら認められる美味しいお米がつくれるのか、試行錯誤を繰り返して迎えた平成13年(2001年)、減農薬の部門で出品した「めんこいな」がついに優良賞を獲得します。全国で認められた嬉しさから、佐々木さん親子のお米づくりへの思いはさらに熱を帯びます。
その甲斐もあり、「あなたが選ぶ日本一おいしいお米コンテスト」では金賞、「すし米コンテスト国際大会」で「すし米大賞」受賞と、立て続けに評価され、佐々木さんは息子たちと共に、美味しいお米づくりに邁進していきます。
「うちの子たちは、もう、農業を継ぐのは当たり前と思ってついてきてくれたので、親孝行な子たちです。亡くなった爺さんっこで、爺さんの久治郎さん(平成27年〔2015年〕に逝去)がこの子らを育ててくれたおかげです」と話してくれました。
長男の巧さんは、家畜人工授精師と家畜受精卵移植師の資格を持ち、由利牛の繁殖牛の飼育をしながら、牛が「美味しい」と喜んで食べる牧草も栽培し出荷しています。
牧草は雨に濡れると、牛はまったく口にしないので、天気図と肌で感じる気圧の変化、鳥海山の頂上あたりの雲の流れ、牧草の育ち具合など、様々な角度の情報を全身で受け止め、天気のいい日が続き乾燥しきったベストな状態の時に刈り取ります。
「佐々木さんとこの牧草は、牛がもくもくと食べてくれるんだ、ありがてな~、と仰っていただくのが嬉しくて仕方ない」と笑顔でお話されました。
ベストな状態を見極め、喜びと共に手掛けた芸術品ともいえる牧草やお米は、その恵みを頂く牛と、そしてなにより人に喜んでもらえます。喜々として働き、汗を流した後の食事は本当に美味しく、生きる力になります。
三男の求さんは無類の機械好きで、「稲の刈りを黙々と取組んでくれるから、俺はとても助かっている」と孝夫さんは笑顔で話します。
13.5haの田んぼでつくるのは、あきたこまち、ササニシキ、ひとめぼれ、餅米のひめのもち、そして温暖化の影響もあっておいしく出来はじめたコシヒカリ。
お米は温度12℃、湿度70%に保った倉庫で管理されています。
「絶対に、どこにも負けない米づくりをする」という佐々木さんの熱い思いは、長男の巧さん、次男の基さん、三男の求さんの3人に確実に引き継がれています。